「防カビ剤」
防カビ剤は農薬?食品添加物?使用目的と危険性
防カビ剤とは?
防カビ剤(防ばい剤)を食品に使用する目的は、外国産のオレンジやレモン等の柑橘類等を長時間輸送する際に、カビが発生することを防ぐために用いられます。
そして、カビの発生を防止するために収穫後に使用される農薬を、防カビ剤(防ばい剤)といいます。
ん?「農薬?食品添加物ではないの?」
防カビ剤のご説明の際に、「農薬」という表現を使いましたが、正しくは「食品添加物」です。どういうことかというと、日本では、収穫前に使用する化学物質は「農薬」、収穫後に使用する化学物質は「食品添加物」として扱うのです。
ですので、収穫後に使用する農薬は食品添加物として扱います。収穫後の農産物に使用する防カビ剤のことを、ポストハーベスト農薬とも言います。ポストとは「後」、ハーベストは「収穫」の意味です。
また、食品添加物として認められている防カビ剤は、アゾキシストロビン、イマザリル、オルトフェニルフェノール、オルトフェニルフェノールナトリウム、ジフェニル、ジフェノコナゾール、チアベンダゾール、ピリメタニル、フルジオキソニル、プロピコナゾールがあります。
これらは使用基準があり、対象食品(主に柑橘類)と最大使用量が決められています。
食品添加物として認められている防カビ剤は安全か?
結論から申し上げると、100%安全ということはありません。
しかし、意外にも防カビ剤を使わないことで危険性が高まるのではないかとの指摘もあります。
どういうことかというと、まず、防カビ剤の中には、発がん性や催奇形性等、人体へ影響を与える疑いのある成分も含まれており、消費者団体を中心に、その危険性が指摘されています。
一方、防カビ剤の発がん性よりも、カビが発生したときの「カビ毒」のほうが強力な発がん性があることから、防カビ剤は必要であるとする意見もございます。防カビ剤は残留農薬と同じように検疫所での検査がなされているので、安全性は確保されているというわけです。
安全性があれば積極的に買って良いか?
しかし、スーパーで輸入オレンジや輸入レモンの売り場を見ると、普通に「防カビ剤不使用」のものが売られているので、わざわざ防カビ剤を使用したレモンを買う必要はないと思います。
一般に、包装せずにバラ売りで販売される食品への添加物表示は免除されているのですが、防カビ剤はバラ売りでも表示義務があります。なので、値札や陳列棚等に、使用した物質名を分かりやすい方法で表示するように決められているのです。売り場の表示を見て、防カビ剤不使用の輸入レモンを買うか、国産レモンを買うのがおすすめです。
輸入柑橘類には防カビ剤を使いますが、国産柑橘類には防カビ剤を使いません。
輸入柑橘類の防カビ剤成分の残留は、果皮に多く、果肉には少ないということが分かっています。皮をむいて果肉を食べれば問題ないの?と思うかもしれませんが、手で皮をむくときに果皮の精油成分とともに防カビ剤が手に付着し、果肉にも付着し、口に入ります。やはり、防カビ剤不使用がいいですね。
もう一例として、バナナはどうでしょうか?バナナはイマザリル等の防カビ剤の使用が認められていますが、バナナ売り場で防カビ剤の表示を見かけませんね。というのも、実は一般的に、バナナは防カビ剤を使いません。
もしも、植物検疫で害虫が発生した場合には、燻蒸処理されますが、燻蒸したかどうかは表示義務がないのです。燻蒸処理が気になる方は、有機バナナを買いましょう。有機バナナは燻蒸されませんので。
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中戸川 貢(なかとがわみつぐ)
・一般社団法人ナチュラル&ミネラル食品アドバイザー協会 代表理事
・加工食品ジャーナリスト
食品機械メーカー、清酒メーカー、お餅メーカー、醤油メーカー勤務を経て、2009年よりNPO法人「食品と暮らしの安全基金」で、主に加工食品のミネラル成分や食品添加物「リン酸塩」を調査。2013年に独立後、食品企業の衛生指導・販売支援を行っている。また、「現代食のミネラル不足」、「食品添加物」、「調味料の選び方」について、全国各地で講演している。2021年より一般社団法人ナチュラル&ミネラル食品アドバイザー協会代表理事。
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