岩井先生の海のあれこれ Vol.1
海の賑わいが悲鳴に変わるー赤潮・青潮
その昔、東京湾や大阪湾は「豊潤な海」と呼ばれ、多くの魚介類が獲れて活気にあふれていました。
これら内湾と呼ばれる海は、栄養が豊富であることが特徴と言え、そこで生活している植物プランクトン、動物プランクトン、海藻草類、魚介類、漁師(人間)の間での健全な食物連鎖の関係の中で海の栄養と海の恵みのバランスがとれていました。
しかし、近年の埋立による浅場の減少や便利な人間生活がもたらす生活排水の影響で、海の栄養塩類が多い「富栄養」の状態になり、植物プランクトンの爆発的な増加による食物連鎖のバランス崩壊がおきます。
このような状態を「赤潮」と言います。
この赤潮ですが、見た目に鮮明な赤もありますが、殆どの場合はオリーブ色になります。
赤潮は、プランクトン自体が持つ毒素による魚介類の大量死に加え、大量のプランクトンの死骸の分解による酸素不足(貧酸素状態)が生じ、大きな漁業被害を引き起こしています。
この貧酸素状態の海水(貧酸素水)が風などの影響で水面近くに上昇(湧昇)すると、溶け込んでいる硫化物の影響で青白く変色し、水面近くにいた生物も死んでしまいます。
これが青潮と呼ばれる現象で、魚だけではなく全ての生きものが死滅してしまうこともあります。
このように、赤潮や青潮の発生は、豊潤だった海の健康のバランスが損われた状態であり、海の悲鳴でもあると言えます。
そして、その悲鳴に気づかず、何も治療ができなければ行き着く先は……。
このようにしないためにも、同じ世界に活きる生物でもある人間として、でき得る限りのことに全員で取り組んで行かなくてはなりません。
岩井克巳(いわいかつみ)
・株式会社 漁師鮮度 代表取締役
・NPO法人 大阪湾沿岸域環境創造研究センター 専務理事
大学卒業後34年間、海域環境改善技術の調査・コンサルタントの仕事に携わる。
現在は、阪南市の小学校で子ども達への海洋教育を行う他、「海のゆりかご」とも呼ばれるアマモ場の再生など様々な海の環境保全活動に取り組む。
2017年より大阪府初の漁協直営のカキ小屋「波有手(ぼうで)のカキ」のオープンに協力し、カキ養殖を手掛ける。